動物別症例集カテゴリ
動物別症例集 : エキゾチックアニマル
トカゲ 口の腫瘍
トカゲ 口の腫瘍
トカゲでは一般的にマウスロット(口の炎症)が多いと言われています。
しかし中には炎症以外にも恐い病気が潜んでいることもあります。
このフトアゴヒゲトカゲさんも、マウスロットとしての治療に反応がなかったため精査を目的として、麻酔下でしこりを切り取って検査に出すと腫瘍(線維肉腫など)という診断でした。
エキゾチック動物さんの腫瘍疾患などはまだまだ治療が発展途上な分野ではありますが、オーナーさんと話し合いの上、積極的に切り取っていくのか、化学療法(抗がん剤)をするのか、放射線を試してみるのかなど検討させていただきますので、ご相談いただければと思います。
うさぎ 陰嚢ヘルニア
うさぎ 陰嚢ヘルニア
うさぎさんは他の哺乳類さんと違って、成長した後でも精巣が陰嚢に入ったり、体の中に戻ったりします。
陰嚢ヘルニアでは、その穴を通じて体の中の臓器が陰嚢に落ちてしまいます。
膀胱が陰嚢に落ちて挟まってしまった、うさぎさんでは尿が出にくいなどの症状が出ており、
手術で膀胱を戻して穴を塞ぎました。
術後は普通に尿も出るようになり、無事治ってよかったです。
ヘルニアは体の一部が膨れることで気が付くこともある病気なので、定期的な健康診断で獣医による触診を受けたり、家でも細めに体を触って変なところがないか注意してあげると良いと思います。
トカゲ コクシジウム
トカゲ コクシジウム
元気食欲の低下を主訴に来院されるトカゲさんで便検査を行うと出てくることもあり寄生虫の一種です。
体重が減ったり、嘔吐したりすることもありますが、無症状で健康診断の時に出てくることもあります。
治療には飲み薬を使用することができますので、健康診断などでうんち検査をして早期発見することが理想です。
セキセイインコの精巣腫瘍
写真のように精巣腫瘍を呈してしまいますと腫瘍から女性ホルモンが多く分泌され、雄であるにもかかわらず、ロウ膜が角化亢進し茶色くなり、その他、太りやすくなったり、飛ぼうとしてもすぐに落ちたりすることもあります。
状態が進行すると、大きくなった腫瘍が消化管を圧迫し、食欲低下、吐き、便が出ないなどの、消化器疾患が見られたり、腹水が溜まり腹部膨満がみられ、肺を圧迫し呼吸困難になる場合などがあります。
治療としては、発情抑制剤を使用し、女性ホルモンの分泌を抑制します。
早期であれば精巣腫瘍を摘出することで完治が望めますが、リスクが高く、現在のところ実施されることはほとんどありません。
ハリネズミの神経症状に対するMRI検査の有用性
神経症状を呈し、ふらつき症候群(WHS)を疑うハリネズミに対し無麻酔下でのMRI検査を実施した二症例について、2018年のエキゾチックペット研究会にて症例発表を行った。
脳炎および脳腫瘍を強く疑う所見を今回実施したMRI検査により得られたため、様々な神経症状に対して生前診断が可能となる事が判明した。
ハリネズミでのMRI検査の報告は未だなく、適正なデータはまだ存在しない。
今後はデータの蓄積や不動化状態での撮影、さらに造影剤を用いた撮影を行う事により精度の高い診断を行う事が課題であると言える。
爬虫類の卵胞鬱滞におけるリュープリン治療の可能性
卵胞鬱滞を呈している爬虫類(ミシシッピアカミミガメの一症例およびサバンナモニターの一症例)に対して、酢酸リュープロレリン(商品名:リュープリン)を用いて治療を行う機会を得たため、2017年のエキゾチックペット研究会にて症例発表を行った。
爬虫類における生殖器疾患は比較的多く、中でも卵塞性が問題になりやすい。卵胞鬱滞は発生機序が明確になってはおらず、外科的な卵巣・卵管摘出術が主な治療法であり、内科的な治療法はいまだ確立されていない。
今後も症例の蓄積を行い、安全域の決定や投与間隔、有効な症例の見極め、使用法の多様化等が課題となる。
フトアゴヒゲトカゲの全身性微胞子虫症
この症例は2016年にエキゾチックペット研究会にて症例発表を行ったものである。全身性微胞子虫症とは診断方法が確立されておらず、生前診断が困難な疾患であるが、おそらくEncephalitozoon sppが関与していると思われる。報告では副腎や肝臓、腸管、脂肪組織における感染も確認されており、症状が多様化しやすく、発見は困難であろう。
モルモットの食滞
下の写真は食欲不振を呈したモルモットのレントゲン写真です。
胃や腸がガスにより拡張していることが分かります。
春と秋の気温が変動する時期の換毛期に多くみられ、症状としては急に食欲がなくなりあまり動かなくなる、ウンチが出ないといった症状を示します。
原因としては、千差万別であり、毛球だけでなく急激な気温の変化や台風など異常気象、食滞とはまた別の病気や異常によるストレスによっても、食滞を引き起こす原因となります。
重篤度においては症状によってはすぐに回復する軽いものから数日の放置で亡くなることもある位重篤なものまで、幅が広いため、早めの診察や治療をお勧めします。
消化管の状態により、輸液や消化管の機能を改善する薬や食欲増進剤の投与など行いますが、消化管が完全に詰まっている場合は、痛みによるショック死も考えられますので、鎮痛剤の投与を行う場合があります。
ウサギのトレポネーマ症
概要
トレポネーマという糸状・らせん状の菌に感染することで起こる皮膚炎です。
ヒトの梅毒症と症状や原因菌が似ているため、ウサギ梅毒と呼ばれることもあります。
ヒトに感染することはありませんが、ウサギ間では交尾によって感染を広めていきます。
また、母ウサギから子ウサギへの接触でも感染することがあります。
症状
トレポネーマに感染後、ストレスや体調悪化などが引き金となり発症します。
発症すると口・鼻や陰部の周囲にかさぶた、潰瘍、水ぶくれなどを形成します。
鼻水やくしゃみがみられることもあります。
また、感染していても症状が出ないこともあり、他のウサギへの感染源になってしまうことがあるので注意が必要です。
治療法
抗生物質の投与により症状の改善が見られますが、完治することはなく、また何らかのきっかけで発症をくりかえしてしまいます。
一度発症してしまったウサギさんは残念ですが繁殖に供さないことが、病気の蔓延防止には有効とされています。