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フクロモモンガの自咬症
はじめに
フクロモモンガはオーストラリアを中心にオセアニア地域に生息している有袋類で、地域によっていくつかの亜種に分けられています。モモンガという名前がつくものの分類学的には大きくかけ離れており、フクロモモンガはカンガルーなどの仲間です。そのためリスの仲間のモモンガとは野生下での習性や食物なども異なっており、飼育下でもそれに則した適切な飼育管理が必要となります。
ここではフクロモモンガでよくみられる自咬症について詳しく説明していきます。
原因
自咬症はさまざまな原因が挙げられるが、環境ストレスや皮膚疾患などに続発して発症することが多いです。
環境ストレス
フクロモモンガは社会性をもつ動物であり、野生下では一頭のオスを中心とした小規模な群れを形成して生活しています。そのためケージ内での単独飼育ではストレスにより自咬症を引き起こすことが報告されており、単独飼育を選択する場合は十分に遊ぶ時間を設ける必要があります。なお、多頭飼育により社会性を満たせないことによるストレスは解消できますが、相性によっては他個体に排他的となる可能性や雌雄の組み合わせでは望まない繁殖の可能性もあるため注意が必要です。
皮膚疾患
自咬症を引き起こす主な部位は臭腺や陰部、育児嚢などで、それらの部位の炎症や分泌異常などに伴うことが多いです。疼痛や掻痒によって自咬が始まると考えられるため、何らかの原因による炎症や創傷も二次的な自咬症の原因となり得ます。
特に雄では炎症や感染の他に、分泌物貯留などを原因とした陰茎脱も多く、これを自傷することがあります。
症状
疼痛や不快感などによる舐め壊しにより皮膚の状態が増悪し、これにより二次的な感染や炎症が発生します。この悪循環により自咬症へと発展して患部の皮膚を自傷し、さらに重度になると筋肉の露出や断尾、陰茎の断裂にまで至ることもあります。
感染が悪化すると膿瘍にまで発展することもあり、これによる皮下膿瘍や突然死のリスクもあります。
検査
自咬症の場合は何が原因であるかを精査することが重要です。細菌や寄生虫の感染や外傷、腫瘤などを各種検査(皮膚細菌検査、尿検査、レントゲン検査、超音波検査など)で除外します。
治療
自咬症はいずれの原因であっても増悪を防ぐための措置が必要であり、カラーの装着が必要となることが多いです。自咬症の原因となるような基礎疾患の治療は重要ですが、すでに患部の状態が悪く個体のQOLの低下が認められるときには、併せてその対症療法も必要となります。
自咬症の治療は洗浄消毒、出血が認められる場合には止血処置を実施し、重度の裂傷などを認めるときには縫合処置が必要になることもあります。また処置後には痛み止めや感染に対して抗生物質の投与をおこないます。
上記の検査やそれに伴う治療反応から、自咬症の原因となる疾患を除外した場合は環境ストレスが原因として挙げられます。その場合では飼養環境の見直し、特に遊ぶ時間を増やすことや、多頭飼育することで改善されたという報告もあります。
予防
自咬症の原因となる疾患は主に皮膚疾患であり、その原因疾患の治療に早い段階で介入することにより増悪を防ぐことができます。さらに皮膚感染症も自咬症の原因となりうるため、環境の清浄化や感染の認められた個体との隔離を実施することが重要です。環境ストレスによる自咬症の場合は、十分に遊ぶ時間を設けることで発症を抑えられる可能性があります。
まとめ
フクロモモンガの自咬症は早いうちから原因を特定し、適切な対策と処置を講じることで予防や改善が期待できます。普段からフクロモモンガの動きや体表をよく観察して、何か異常を認めた場合には動物病院を受診することが重要です。アリーズ動物病院でもフクロモモンガの診察をしております。何か気になることがあればご相談ください。
フクロモモンガはオーストラリアを中心にオセアニア地域に生息している有袋類で、地域によっていくつかの亜種に分けられています。モモンガという名前がつくものの分類学的には大きくかけ離れており、フクロモモンガはカンガルーなどの仲間です。そのためリスの仲間のモモンガとは野生下での習性や食物なども異なっており、飼育下でもそれに則した適切な飼育管理が必要となります。
ここではフクロモモンガでよくみられる自咬症について詳しく説明していきます。
原因
自咬症はさまざまな原因が挙げられるが、環境ストレスや皮膚疾患などに続発して発症することが多いです。
環境ストレス
フクロモモンガは社会性をもつ動物であり、野生下では一頭のオスを中心とした小規模な群れを形成して生活しています。そのためケージ内での単独飼育ではストレスにより自咬症を引き起こすことが報告されており、単独飼育を選択する場合は十分に遊ぶ時間を設ける必要があります。なお、多頭飼育により社会性を満たせないことによるストレスは解消できますが、相性によっては他個体に排他的となる可能性や雌雄の組み合わせでは望まない繁殖の可能性もあるため注意が必要です。
皮膚疾患
自咬症を引き起こす主な部位は臭腺や陰部、育児嚢などで、それらの部位の炎症や分泌異常などに伴うことが多いです。疼痛や掻痒によって自咬が始まると考えられるため、何らかの原因による炎症や創傷も二次的な自咬症の原因となり得ます。
特に雄では炎症や感染の他に、分泌物貯留などを原因とした陰茎脱も多く、これを自傷することがあります。
症状
疼痛や不快感などによる舐め壊しにより皮膚の状態が増悪し、これにより二次的な感染や炎症が発生します。この悪循環により自咬症へと発展して患部の皮膚を自傷し、さらに重度になると筋肉の露出や断尾、陰茎の断裂にまで至ることもあります。
感染が悪化すると膿瘍にまで発展することもあり、これによる皮下膿瘍や突然死のリスクもあります。
検査
自咬症の場合は何が原因であるかを精査することが重要です。細菌や寄生虫の感染や外傷、腫瘤などを各種検査(皮膚細菌検査、尿検査、レントゲン検査、超音波検査など)で除外します。
治療
自咬症はいずれの原因であっても増悪を防ぐための措置が必要であり、カラーの装着が必要となることが多いです。自咬症の原因となるような基礎疾患の治療は重要ですが、すでに患部の状態が悪く個体のQOLの低下が認められるときには、併せてその対症療法も必要となります。
自咬症の治療は洗浄消毒、出血が認められる場合には止血処置を実施し、重度の裂傷などを認めるときには縫合処置が必要になることもあります。また処置後には痛み止めや感染に対して抗生物質の投与をおこないます。
上記の検査やそれに伴う治療反応から、自咬症の原因となる疾患を除外した場合は環境ストレスが原因として挙げられます。その場合では飼養環境の見直し、特に遊ぶ時間を増やすことや、多頭飼育することで改善されたという報告もあります。
予防
自咬症の原因となる疾患は主に皮膚疾患であり、その原因疾患の治療に早い段階で介入することにより増悪を防ぐことができます。さらに皮膚感染症も自咬症の原因となりうるため、環境の清浄化や感染の認められた個体との隔離を実施することが重要です。環境ストレスによる自咬症の場合は、十分に遊ぶ時間を設けることで発症を抑えられる可能性があります。
まとめ
フクロモモンガの自咬症は早いうちから原因を特定し、適切な対策と処置を講じることで予防や改善が期待できます。普段からフクロモモンガの動きや体表をよく観察して、何か異常を認めた場合には動物病院を受診することが重要です。アリーズ動物病院でもフクロモモンガの診察をしております。何か気になることがあればご相談ください。
フェレットの副腎疾患
はじめに
フェレットの副腎疾患は副腎腫瘍や副腎の過形成を原因として発生する疾患です。また副腎疾患は膵臓腫瘍に起因するインスリノーマや心疾患と並び、フェレットに最も多くみられる疾患の一つです。国内で飼育されるフェレットの多くは早期に避妊去勢手術を実施されていることが多く、それに伴い生殖器疾患の報告が減少したという報告もありますが、発生の原因としてわかっていない事も多い病気です。
ここではフェレットの副腎疾患についての症状や検査、治療法について詳しく解説していきます。
症状
フェレットの副腎疾患は中高齢のフェレットに好発します。副腎疾患に特徴的な徴候としては以下のようなものが挙げられます。
・脱毛
・メス:外陰部腫大/オス:前立腺肥大による排尿障害
・掻痒
その他、皮膚症状や筋肉の萎縮などの徴候も認められ、特に脱毛については他の疾患を原因として発生することは少ないため副腎疾患を強く疑います。ただしその観察部位は個体によって差があり、注意深く観察し、鑑別する必要があります。脱毛やそれに続発する皮膚症状などと比較して、オスの前立腺肥大による排尿障害や、骨髄抑制がフェレットの寿命に大きく関わります。
検査
脱毛などの特徴的な臨床症状やその好発年齢から副腎疾患を強く疑うことが出来るが、その診断は副腎の検出やホルモン測定が挙げられます。ただしホルモン測定は費用やその意義から実施せずに診断的治療に進むことも少なくありません。
超音波検査
通常、フェレットの副腎は楕円形で平たい形状であり、罹患副腎では腫大や変形を認めることが多い。超音波検査ではこの腫大や変形がないかを確認する。
ホルモン測定
フェレットの副腎疾患では前述のように性ホルモンの上昇が認められることが多く、ホルモン値測定による診断方法も報告されています。ただし、明らかな臨床症状があってもホルモンの値が上昇しない事もあり、臨床症状や他の検査結果を踏まえたうえで鑑別することが重要です。
治療
治療方針としては完治ではなく、臨床症状を抑える目的での寛解を目指します。性ホルモンを過剰に分泌する副腎が根本的な原因となっているため、外科的な治療では罹患副腎の切除を行います。外科的な処置のリスクが高い個体では内科的に治療していくことが推奨されます。なお、内科的治療に合わせて外科的治療を実施した方が予後が良い可能性も指摘されているため、その治療方針については症例の状態を見て決定します。
外科的治療
副腎の腫大を認めた場合に治療を開始するが、明らかな腫大を認めない場合には内科的な診断的治療を実施するか、経過観察として定期的に副腎を評価します。なお、外科的治療として罹患副腎を摘出した後に、反対側の副腎や副副腎の腫大が認められることもあり、その場合は再手術や内科的治療を開始します。
内科的治療
主に脱毛などの臨床症状の発現を治療開始のポイントとし、定期的な検査のもとで治療を行います。治療に用いるのはGnRHアナログという性ホルモンの前駆物質であり、これを投与することによる負のフィードバックが生じて過剰な性ホルモンの産生を抑える目的になります。
まとめ
フェレットの副腎疾患は性ホルモンの過剰分泌によるものです。治療方針としては、外科的治療により根本的な原因となっている副腎を摘出するか、内科的治療によってそのホルモン分泌を抑えていくかの二つになります。なお、いずれも臨床症状を抑えて管理することが目的となり、完治することは難しい疾患です。
ただし早期発見および早期の治療介入により、予後が良好となることも示唆されており、常日頃から体調に変化がないか観察していくことが重要です。
フェレットの副腎疾患は副腎腫瘍や副腎の過形成を原因として発生する疾患です。また副腎疾患は膵臓腫瘍に起因するインスリノーマや心疾患と並び、フェレットに最も多くみられる疾患の一つです。国内で飼育されるフェレットの多くは早期に避妊去勢手術を実施されていることが多く、それに伴い生殖器疾患の報告が減少したという報告もありますが、発生の原因としてわかっていない事も多い病気です。
ここではフェレットの副腎疾患についての症状や検査、治療法について詳しく解説していきます。
症状
フェレットの副腎疾患は中高齢のフェレットに好発します。副腎疾患に特徴的な徴候としては以下のようなものが挙げられます。
・脱毛
・メス:外陰部腫大/オス:前立腺肥大による排尿障害
・掻痒
その他、皮膚症状や筋肉の萎縮などの徴候も認められ、特に脱毛については他の疾患を原因として発生することは少ないため副腎疾患を強く疑います。ただしその観察部位は個体によって差があり、注意深く観察し、鑑別する必要があります。脱毛やそれに続発する皮膚症状などと比較して、オスの前立腺肥大による排尿障害や、骨髄抑制がフェレットの寿命に大きく関わります。
検査
脱毛などの特徴的な臨床症状やその好発年齢から副腎疾患を強く疑うことが出来るが、その診断は副腎の検出やホルモン測定が挙げられます。ただしホルモン測定は費用やその意義から実施せずに診断的治療に進むことも少なくありません。
超音波検査
通常、フェレットの副腎は楕円形で平たい形状であり、罹患副腎では腫大や変形を認めることが多い。超音波検査ではこの腫大や変形がないかを確認する。
ホルモン測定
フェレットの副腎疾患では前述のように性ホルモンの上昇が認められることが多く、ホルモン値測定による診断方法も報告されています。ただし、明らかな臨床症状があってもホルモンの値が上昇しない事もあり、臨床症状や他の検査結果を踏まえたうえで鑑別することが重要です。
治療
治療方針としては完治ではなく、臨床症状を抑える目的での寛解を目指します。性ホルモンを過剰に分泌する副腎が根本的な原因となっているため、外科的な治療では罹患副腎の切除を行います。外科的な処置のリスクが高い個体では内科的に治療していくことが推奨されます。なお、内科的治療に合わせて外科的治療を実施した方が予後が良い可能性も指摘されているため、その治療方針については症例の状態を見て決定します。
外科的治療
副腎の腫大を認めた場合に治療を開始するが、明らかな腫大を認めない場合には内科的な診断的治療を実施するか、経過観察として定期的に副腎を評価します。なお、外科的治療として罹患副腎を摘出した後に、反対側の副腎や副副腎の腫大が認められることもあり、その場合は再手術や内科的治療を開始します。
内科的治療
主に脱毛などの臨床症状の発現を治療開始のポイントとし、定期的な検査のもとで治療を行います。治療に用いるのはGnRHアナログという性ホルモンの前駆物質であり、これを投与することによる負のフィードバックが生じて過剰な性ホルモンの産生を抑える目的になります。
まとめ
フェレットの副腎疾患は性ホルモンの過剰分泌によるものです。治療方針としては、外科的治療により根本的な原因となっている副腎を摘出するか、内科的治療によってそのホルモン分泌を抑えていくかの二つになります。なお、いずれも臨床症状を抑えて管理することが目的となり、完治することは難しい疾患です。
ただし早期発見および早期の治療介入により、予後が良好となることも示唆されており、常日頃から体調に変化がないか観察していくことが重要です。
フェレットのインスリノーマ
フェレットのインスリノーマは膵臓の腫瘍が原因となる緊急疾患で、進行すると重度の低血糖を呈し、死亡することも少なくありません。
ここではフェレットのインスリノーマの徴候や治療法などを詳しく解説していきます。
原因
血糖値の維持にはたらくホルモンであるインスリンは膵臓のβ細胞から分泌され、正常では血中の血糖値に対応して、血糖値を下げる方向にはたらきます。フェレットのインスリノーマは膵臓の腫瘍であり、インスリンの過剰分泌に起因して低血糖を引き起こします。なお膵臓に腫瘍が発生する原因はまだ詳しく分かっていません。
疫学
主に中高齢(4-6歳以降)に好発します。性別による発生率には大きな違いは無いとされています。
症状
フェレットのインスリノーマの症状は主に低血糖に起因したものであり、以下のような徴候が見られることが多いです。
特に前三者についてはWhippleの三徴と称され、低血糖を疑います。
①空腹時の意識消失性発作
②発作時低血糖
③糖の補給による回復
他にも、体重減少や後肢麻痺、流涎、元気消失が挙げられます。
さらに長時間の低血糖は全身の諸臓器にも影響を及ぼし、それらの機能不全を引き起こします。また血糖値の急激な低下はアドレナリンの作用による交感神経の緊張を亢進し、頻脈や低体温、過敏症などを起こすことがあります。
以下の項目を自宅で確認してみましょう。
□いつも遊んでいる時間に起きてこない。
□よだれ、鼻水が良く出ている。
□ふるえ(発作、けいれん)がみられる。
□運動能力が落ちた。
□ぼんやりしている。
これらの項目にチェックが付いた場合は動物病院で検診を受けましょう。
検査
フェレットのインスリノーマは上記の特徴的な徴候と合わせて、主に血液検査で鑑別します。特徴的な項目としては、血糖値や血中インスリン濃度の測定があります。
血糖値測定
フェレットの正常の血糖値は90-100mg/dL程度とされており、70mg/dL (4-6時間絶食時)を下回るようであればインスリノーマを疑います。ただし低血糖になる原因としては種々の腫瘍性疾患や肝不全、副腎機能低下症なども挙げられるため、血液検査の結果や他の検査方法と合わせて鑑別します。
低血糖に対する代償機能がはたらいた場合にはインスリノーマでも血糖値は基準値内にあることや、慢性的な低血糖により重度の低血糖でも徴候を示していない場合もあり、他の検査項目や一般状態を考慮する必要があります。なお血糖値が20-40mg/dLの場合は昏睡状態となっていることが多いです。
血中インスリン濃度
上記の低血糖と併せて高インスリンがみられれば、インスリンの過剰分泌による低血糖状態の可能性が高く、インスリノーマを強く疑います。なお、この検査では偽陰性(実際は陽性だが、検査数値上では陰性となるもの)も考慮する必要があり、臨床症状や他の検査を踏まえたうえで総合的に判断する必要があります。
血液生化学検査
インスリノーマに罹患した個体では肝数値の上昇が認められることがあります。インスリンは全身の筋肉や脂肪組織においては各細胞への糖の取り込みと、その取り込まれた糖の貯蔵体(グリコーゲン)への変換にはたらき血糖値を下げる方向にはたらくほか、タンパク質や脂肪の合成を促進します。肝臓においても脂肪の合成を促進する方向にはたらき、脂肪肝(肝リピドーシス)となることがあります。これにより肝機能の低下が生じることで、肝数値の上昇が認められることがあります。または肝臓への転移により肝機能の低下が生じている可能性もあります。
その他の検査としてはレントゲン検査や超音波検査が挙げられます。レントゲン検査では著変を認めない事も多いが、超音波検査においては膵臓や周囲リンパ節の病変や肝臓や脾臓への転移性結節を確認できることがあります。また肝臓への転移や前述の脂肪肝の確認も行います。なお、インスリノーマを特異的に判断するのは難しいことが多く、その場合は膵臓の病理検査によって確定診断を行います。
治療
治療の方針としては、主に「完治」よりも「状態維持」を目指します。急激な低血糖状態となることが生体の維持に関わる為、この低血糖状態にならないように内科療法または補助的に外科療法を行うことが多いです。
明らかな腫瘤を認めた場合や膵臓の部分摘出を行うことによる治療効果を認めることもありますが、残った腫瘤が拡大していき再発することが多いです。そのため手術を選択するかどうかは飼い主と獣医師でよく相談したうえで実施します。
外科療法
インスリノーマは膵臓の腫瘍に起因するため、外科的に腫瘤切除や膵臓を部分的に摘出することは理論的には効果的であると言えます。なお、外科的に切除した後には残存した腫瘤が拡大することも少なくなく、繰り返しの処置が必要となることが多いです。内科的な治療と併用することで治療効果が高まるという報告もあります。
内科療法
内科的な治療としては、食餌療法や薬による維持があります。
食餌療法
血糖値は主に炭水化物の多い食餌や、一度に多くの食餌を与えることで上昇しやすいです。そのため、食餌を小分けにして与えることや、炭水化物の少ない食餌を選択することが重要です。なお肉食傾向の強いキャットフードやフェレット専用フードは高タンパクに設計されています。
投薬
プレドニゾロン(ステロイド)による血糖値の上昇やジアゾキシド(利尿薬の一種)によるインスリンの分泌抑制による治療が挙げられます。
プレドニゾロン
プレドニゾロンは全身の細胞への糖の取り込みを抑制するうえ、肝臓における糖新生(グリコーゲン→グルコース)を促進することで血糖値を上昇させます。インスリノーマに対するプレドニゾロンの投与は完治ではなく、あくまで血糖値の低下を抑える目的のため生涯服用する必要があります。プレドニゾロンは長期服用による副作用が発現することがあり、これを理解したうえで投薬に進む必要がある。
主な副作用には以下のようなものがあります。
・胃腸障害
:胃粘膜の保護機能の低下および胃酸分泌促進作用による(諸説あり)。
・脱毛などの皮膚症状
:皮膚のターンオーバーや被毛の毛周期を抑えることによる。皮膚の免疫機構が弱ることで寄生虫や細菌等に感染しやすくなる。
・脂肪の蓄積、筋肉の萎縮、肝酵素上昇
:肝臓や全身の筋肉における脂肪の同化、タンパクの異化作用による。
・心不全傾向
:体液保持および、それによって心臓に送り込まれる血液量の増加などによる。
ジアゾキシド
プレドニゾロンと異なり、インスリンの分泌を抑えることにより血糖値の低下を抑制します。主にプレドニゾロンの治療反応などを見たうえで開始します。
なお、食欲不振や嘔吐などの消化器障害、貧血などの副作用も認められるため、プレドニゾロンと同様に定期的なモニタリングが必要です。
低血糖発作時には…
安静時の食餌管理としては炭水化物の少ない食餌を心掛けますが、上記の低血糖徴候がみられた時には糖の補充を行います。なお、過剰な糖の補充を行うと低血糖を助長する可能性がある為、少量ずつの投与や嚥下可能な状態の時は同時にフードも給餌します。なお、重度の神経症状に進行した場合では、糖に対する反応が認められない事があります。
まとめ 中高齢のフェレットに好発するインスリノーマは低血糖を引き起こし、重度となると全身に影響を及ぼします。前述したような特徴的な徴候はありますが、明らかな徴候を見せない場合も多いです。特に中高齢に差し掛かったフェレットは自宅での行動の変化をよく観察したうえで、定期的な検診を受けることが重要です。
ご自宅のフェレットの体調等でご心配なことがあれば、何でもご相談ください。
ここではフェレットのインスリノーマの徴候や治療法などを詳しく解説していきます。
原因
血糖値の維持にはたらくホルモンであるインスリンは膵臓のβ細胞から分泌され、正常では血中の血糖値に対応して、血糖値を下げる方向にはたらきます。フェレットのインスリノーマは膵臓の腫瘍であり、インスリンの過剰分泌に起因して低血糖を引き起こします。なお膵臓に腫瘍が発生する原因はまだ詳しく分かっていません。
疫学
主に中高齢(4-6歳以降)に好発します。性別による発生率には大きな違いは無いとされています。
症状
フェレットのインスリノーマの症状は主に低血糖に起因したものであり、以下のような徴候が見られることが多いです。
特に前三者についてはWhippleの三徴と称され、低血糖を疑います。
①空腹時の意識消失性発作
②発作時低血糖
③糖の補給による回復
他にも、体重減少や後肢麻痺、流涎、元気消失が挙げられます。
さらに長時間の低血糖は全身の諸臓器にも影響を及ぼし、それらの機能不全を引き起こします。また血糖値の急激な低下はアドレナリンの作用による交感神経の緊張を亢進し、頻脈や低体温、過敏症などを起こすことがあります。
以下の項目を自宅で確認してみましょう。
□いつも遊んでいる時間に起きてこない。
□よだれ、鼻水が良く出ている。
□ふるえ(発作、けいれん)がみられる。
□運動能力が落ちた。
□ぼんやりしている。
これらの項目にチェックが付いた場合は動物病院で検診を受けましょう。
検査
フェレットのインスリノーマは上記の特徴的な徴候と合わせて、主に血液検査で鑑別します。特徴的な項目としては、血糖値や血中インスリン濃度の測定があります。
血糖値測定
フェレットの正常の血糖値は90-100mg/dL程度とされており、70mg/dL (4-6時間絶食時)を下回るようであればインスリノーマを疑います。ただし低血糖になる原因としては種々の腫瘍性疾患や肝不全、副腎機能低下症なども挙げられるため、血液検査の結果や他の検査方法と合わせて鑑別します。
低血糖に対する代償機能がはたらいた場合にはインスリノーマでも血糖値は基準値内にあることや、慢性的な低血糖により重度の低血糖でも徴候を示していない場合もあり、他の検査項目や一般状態を考慮する必要があります。なお血糖値が20-40mg/dLの場合は昏睡状態となっていることが多いです。
血中インスリン濃度
上記の低血糖と併せて高インスリンがみられれば、インスリンの過剰分泌による低血糖状態の可能性が高く、インスリノーマを強く疑います。なお、この検査では偽陰性(実際は陽性だが、検査数値上では陰性となるもの)も考慮する必要があり、臨床症状や他の検査を踏まえたうえで総合的に判断する必要があります。
血液生化学検査
インスリノーマに罹患した個体では肝数値の上昇が認められることがあります。インスリンは全身の筋肉や脂肪組織においては各細胞への糖の取り込みと、その取り込まれた糖の貯蔵体(グリコーゲン)への変換にはたらき血糖値を下げる方向にはたらくほか、タンパク質や脂肪の合成を促進します。肝臓においても脂肪の合成を促進する方向にはたらき、脂肪肝(肝リピドーシス)となることがあります。これにより肝機能の低下が生じることで、肝数値の上昇が認められることがあります。または肝臓への転移により肝機能の低下が生じている可能性もあります。
その他の検査としてはレントゲン検査や超音波検査が挙げられます。レントゲン検査では著変を認めない事も多いが、超音波検査においては膵臓や周囲リンパ節の病変や肝臓や脾臓への転移性結節を確認できることがあります。また肝臓への転移や前述の脂肪肝の確認も行います。なお、インスリノーマを特異的に判断するのは難しいことが多く、その場合は膵臓の病理検査によって確定診断を行います。
治療
治療の方針としては、主に「完治」よりも「状態維持」を目指します。急激な低血糖状態となることが生体の維持に関わる為、この低血糖状態にならないように内科療法または補助的に外科療法を行うことが多いです。
明らかな腫瘤を認めた場合や膵臓の部分摘出を行うことによる治療効果を認めることもありますが、残った腫瘤が拡大していき再発することが多いです。そのため手術を選択するかどうかは飼い主と獣医師でよく相談したうえで実施します。
外科療法
インスリノーマは膵臓の腫瘍に起因するため、外科的に腫瘤切除や膵臓を部分的に摘出することは理論的には効果的であると言えます。なお、外科的に切除した後には残存した腫瘤が拡大することも少なくなく、繰り返しの処置が必要となることが多いです。内科的な治療と併用することで治療効果が高まるという報告もあります。
内科療法
内科的な治療としては、食餌療法や薬による維持があります。
食餌療法
血糖値は主に炭水化物の多い食餌や、一度に多くの食餌を与えることで上昇しやすいです。そのため、食餌を小分けにして与えることや、炭水化物の少ない食餌を選択することが重要です。なお肉食傾向の強いキャットフードやフェレット専用フードは高タンパクに設計されています。
投薬
プレドニゾロン(ステロイド)による血糖値の上昇やジアゾキシド(利尿薬の一種)によるインスリンの分泌抑制による治療が挙げられます。
プレドニゾロン
プレドニゾロンは全身の細胞への糖の取り込みを抑制するうえ、肝臓における糖新生(グリコーゲン→グルコース)を促進することで血糖値を上昇させます。インスリノーマに対するプレドニゾロンの投与は完治ではなく、あくまで血糖値の低下を抑える目的のため生涯服用する必要があります。プレドニゾロンは長期服用による副作用が発現することがあり、これを理解したうえで投薬に進む必要がある。
主な副作用には以下のようなものがあります。
・胃腸障害
:胃粘膜の保護機能の低下および胃酸分泌促進作用による(諸説あり)。
・脱毛などの皮膚症状
:皮膚のターンオーバーや被毛の毛周期を抑えることによる。皮膚の免疫機構が弱ることで寄生虫や細菌等に感染しやすくなる。
・脂肪の蓄積、筋肉の萎縮、肝酵素上昇
:肝臓や全身の筋肉における脂肪の同化、タンパクの異化作用による。
・心不全傾向
:体液保持および、それによって心臓に送り込まれる血液量の増加などによる。
ジアゾキシド
プレドニゾロンと異なり、インスリンの分泌を抑えることにより血糖値の低下を抑制します。主にプレドニゾロンの治療反応などを見たうえで開始します。
なお、食欲不振や嘔吐などの消化器障害、貧血などの副作用も認められるため、プレドニゾロンと同様に定期的なモニタリングが必要です。
低血糖発作時には…
安静時の食餌管理としては炭水化物の少ない食餌を心掛けますが、上記の低血糖徴候がみられた時には糖の補充を行います。なお、過剰な糖の補充を行うと低血糖を助長する可能性がある為、少量ずつの投与や嚥下可能な状態の時は同時にフードも給餌します。なお、重度の神経症状に進行した場合では、糖に対する反応が認められない事があります。
まとめ 中高齢のフェレットに好発するインスリノーマは低血糖を引き起こし、重度となると全身に影響を及ぼします。前述したような特徴的な徴候はありますが、明らかな徴候を見せない場合も多いです。特に中高齢に差し掛かったフェレットは自宅での行動の変化をよく観察したうえで、定期的な検診を受けることが重要です。
ご自宅のフェレットの体調等でご心配なことがあれば、何でもご相談ください。
ウサギの消化管うっ滞
「ウサギの消化管うっ滞:原因、症状、治療」
1.はじめに
肉や魚など様々な高栄養のものを食べる私たち人間と異なり、完全に植物を主食とするウサギは消化の効率を高めることで栄養の少ない植物から必要なエネルギーを得ています。その主な方法は腸内細菌の力を借りた盲腸での発酵であり、これが上手くできないと必要な炭水化物やビタミン類が得られず栄養不良に陥ります。
消化管うっ滞を引き起こす原因は多くありますが、ここではその症状や検査、治療法などを詳しく解説していきます。
2.消化管うっ滞の原因
消化管うっ滞は消化管の内容物を動かす働き(以下、蠕動運動)が低下、または停止した状態であり、様々な原因によって引き起こされます。特に繊維質の少ない食餌によるものも多いですが、中でも最も一般的な原因は以下の通りです。
不適切な食餌
ウサギの消化管は高繊維質の食餌により蠕動運動が促進されるため、ペレットの主食化や多給、野菜の過剰摂取により消化管の正常な運動が阻害されることで引き起こされます。ウサギのグルーミングにより取り込まれた被毛は正常であれば糞便とともに排泄されますが、蠕動運動が阻害された状態であると被毛が正常に排泄されずに消化管内で停滞します。この停滞した内容物は水分の吸収に伴い圧縮され、消化管うっ滞の増悪を起こします。また、繊維質の少なく炭水化物の多い食餌を多給することで消化管内の環境が変化して微生物の構成に変化が生じる上、炭水化物は微生物による毒素産生のエネルギーとなり細菌性の腸炎を発症します。
痛みや環境変化などによるストレス
ウサギの消化管は神経の複雑な支配を受けており、蠕動運動は副交感神経の支配を受けています。ストレスなどにより交感神経優位となった状態では、蠕動運動が低下して消化や排泄に影響を及ぼします。
また不正咬合やその痛みなどにより食餌を摂れないときは、消化管内容物が低下することで消化管の蠕動運動が低下してしまいます。
3.消化管うっ滞の症状
ウサギの消化管うっ滞は主に食欲不振や排便量の減少などが主な症状ですが、何らかの疾患に伴って発生することも多い疾患です。消化管うっ滞を疑ったうえで背景にある原因を精査することが重要です。ここでは主な症状を以下に示します。
食欲不振
鶏が先か、卵が先かのジレンマですが、うっ滞により消化管の蠕動運動が低下すると食欲不振が生じ、これにより消化管内の繊維質がさらに少なくなることで食欲の低下が助長されるという悪循環が生じます。
糞便の減少、変化
上の食欲不振と同様にして消化管の蠕動運動が低下することで、糞便の量が減少や糞塊の形のいびつ化、小型化、大小不同などが認められます。さらに消化管うっ滞に起因した細菌性腸炎を伴うときには下痢を認めることもあります。
活動性低下
消化管うっ滞による疼痛や不快感により生じます。いつもより遊ぶ時間が減少することや、腹ばいになってじっとしている等があれば注意が必要です。疼痛や不快感による歯ぎしりが認められることもあります。
腹部膨満
消化管うっ滞が生じると、主に胃における内容物の停滞と以降の消化管でのガスの貯留が認められることで腹部が膨満します。触診上でも腹部の膨満と張り、さらには疼痛を認めることもあります。腹部膨満による圧迫や疼痛による呼吸促拍が認められることもあります。
4.消化管うっ滞の検査
消化管うっ滞の最も一般的な原因は不適切な食餌であるため、普段の食餌内容の問診を行います。ここでは、チモシーやペレット以外に野菜や市販のおやつなどを常食しているかどうか等を聴取します。
まず視診上で姿勢や行動を確認して明らかな疼痛を呈していないかどうかや、呼吸状態の確認を行います。視診で状態を把握後、腹部の触診を実施し、胃の硬さや緊張、触診時の疼痛の有無を確認します。
触診後、X線検査により消化管の評価を行います。消化管うっ滞では主に胃に消化管内容物が停滞し、以降の消化管においてはガスの貯留が認められることがあります(写真1, 2)。重症例では胃の内容物が圧縮された特徴的な像が認められます。
消化管うっ滞は疼痛や不快感などによっても引き起こされるため、様々な疾患が原因となります。特に不正咬合は消化管うっ滞と同様に最も一般的な疾患の一つであり、併発していることも少なくありません。そのため、上記の消化管うっ滞の検査の他に口腔内検査などの他の疾患の精査も必要となり、上記の様々な検査をもとに確定診断を行います。
5.消化管うっ滞の治療方法
問診時の食餌内容に問題があれば、まずはその内容の見直しを行います。具体的には牧草とペレットを中心とした食餌が理想であり、他の野菜やおやつは控えます。さらに牧草もチモシーやアルファルファ、イタリアンライグラスなどがありますが、主食としての牧草は高繊維、低タンパクのものが必要であるため、その特徴を最も満たすチモシーの一番刈りを与えます。他の牧草もその嗜好性や栄養面から、成長期や食欲不振時などで使い分けることが重要です。
治療の方針としてはうっ滞の緩和と、疼痛があればその管理を行います。脱水の評価を行い、水和による循環の改善を目的とした輸液を行うほか、消化管運動促進薬を投与します。さらに食欲の廃絶が生じている場合には、消化管の蠕動運動促進と栄養の補給を目的とした強制給餌を行うこともあります。強制給餌は必要カロリーを摂取させることで、栄養不良により生じる肝不全;肝リピドーシスの予防にもつながります。
ただし、胃に停滞した内容物が圧縮されて固くなり、閉塞に至った場合や内科療法で反応がない場合には外科的に内容物を取り除くこともあります。
また消化管うっ滞を副次的に起こしうるような疾患が明らかになったときには、その疾患にアプローチしていきます。
6.消化管うっ滞の予防
予防としては食餌の管理が最も重要であり、牧草を食べずにペレットが主食となっている場合や野菜、おやつを常食している個体は消化管の蠕動運動が低下しやすく消化管うっ滞のリスクが高まります。さらにこれらの食餌内容は、消化管うっ滞の原因となりうる不正咬合の原因にもなります。
野菜や市販のおやつ類を喜んで食べる姿は見ていて嬉しいものですが、長期的なウサギの健康のためにもチモシーを主食として与えていくことが重要です。また、チモシーは多年草であり、収穫のシーズンによって一番刈り、二番刈り、三番刈りに分けられ、その年の初めに収穫されたチモシーである一番刈りは、粗蛋白や粗脂肪が少なく高繊維であるためウサギの主食として最も適しています。ただし硬く栄養は少ない特徴から嗜好性は劣るため、食欲低下している場合やもとよりチモシーをあまり食べない場合は、一番刈りよりも繊維質は少ないが高栄養で嗜好性の高い三番刈りから与えていきます。
他にもマメ科のアルファルファも嗜好性が高いですが、繊維質が少なくタンパク質やカルシウムの多い特徴を有しているため、成長期以降も与え続けると消化管うっ滞の他にも不正咬合や肥満、尿路結石の原因となります。そのため主食として与えるのは成長期(生後6か月程度)までに留めて、年齢に伴ってチモシーの割合を増やしていくことが重要です。
7.まとめ
様々な原因から起こるウサギの消化管うっ滞は、重症化すると死に至る疾患です。ただしもっとも一般的な原因は不適切な食餌内容であることから、食餌内容を適正化することで十分予防することができる疾患です。早期の発見による軽症例では内科的な反応が奏功することも多いですが、軽症時には明らかな症状を表すことが少ない動物です。「いつも食べている量を食べない」や「少し元気がない気がする」、「ウンチの形がいつもと違う」等の変化があれば早めに動物病院を受診しましょう。また消化管のうっ滞の原因となりうる不正咬合の評価等の定期的な健康診断を受けることも重要です。
1.はじめに
肉や魚など様々な高栄養のものを食べる私たち人間と異なり、完全に植物を主食とするウサギは消化の効率を高めることで栄養の少ない植物から必要なエネルギーを得ています。その主な方法は腸内細菌の力を借りた盲腸での発酵であり、これが上手くできないと必要な炭水化物やビタミン類が得られず栄養不良に陥ります。
消化管うっ滞を引き起こす原因は多くありますが、ここではその症状や検査、治療法などを詳しく解説していきます。
2.消化管うっ滞の原因
消化管うっ滞は消化管の内容物を動かす働き(以下、蠕動運動)が低下、または停止した状態であり、様々な原因によって引き起こされます。特に繊維質の少ない食餌によるものも多いですが、中でも最も一般的な原因は以下の通りです。
不適切な食餌
ウサギの消化管は高繊維質の食餌により蠕動運動が促進されるため、ペレットの主食化や多給、野菜の過剰摂取により消化管の正常な運動が阻害されることで引き起こされます。ウサギのグルーミングにより取り込まれた被毛は正常であれば糞便とともに排泄されますが、蠕動運動が阻害された状態であると被毛が正常に排泄されずに消化管内で停滞します。この停滞した内容物は水分の吸収に伴い圧縮され、消化管うっ滞の増悪を起こします。また、繊維質の少なく炭水化物の多い食餌を多給することで消化管内の環境が変化して微生物の構成に変化が生じる上、炭水化物は微生物による毒素産生のエネルギーとなり細菌性の腸炎を発症します。
痛みや環境変化などによるストレス
ウサギの消化管は神経の複雑な支配を受けており、蠕動運動は副交感神経の支配を受けています。ストレスなどにより交感神経優位となった状態では、蠕動運動が低下して消化や排泄に影響を及ぼします。
また不正咬合やその痛みなどにより食餌を摂れないときは、消化管内容物が低下することで消化管の蠕動運動が低下してしまいます。
3.消化管うっ滞の症状
ウサギの消化管うっ滞は主に食欲不振や排便量の減少などが主な症状ですが、何らかの疾患に伴って発生することも多い疾患です。消化管うっ滞を疑ったうえで背景にある原因を精査することが重要です。ここでは主な症状を以下に示します。
食欲不振
鶏が先か、卵が先かのジレンマですが、うっ滞により消化管の蠕動運動が低下すると食欲不振が生じ、これにより消化管内の繊維質がさらに少なくなることで食欲の低下が助長されるという悪循環が生じます。
糞便の減少、変化
上の食欲不振と同様にして消化管の蠕動運動が低下することで、糞便の量が減少や糞塊の形のいびつ化、小型化、大小不同などが認められます。さらに消化管うっ滞に起因した細菌性腸炎を伴うときには下痢を認めることもあります。
活動性低下
消化管うっ滞による疼痛や不快感により生じます。いつもより遊ぶ時間が減少することや、腹ばいになってじっとしている等があれば注意が必要です。疼痛や不快感による歯ぎしりが認められることもあります。
腹部膨満
消化管うっ滞が生じると、主に胃における内容物の停滞と以降の消化管でのガスの貯留が認められることで腹部が膨満します。触診上でも腹部の膨満と張り、さらには疼痛を認めることもあります。腹部膨満による圧迫や疼痛による呼吸促拍が認められることもあります。
4.消化管うっ滞の検査
消化管うっ滞の最も一般的な原因は不適切な食餌であるため、普段の食餌内容の問診を行います。ここでは、チモシーやペレット以外に野菜や市販のおやつなどを常食しているかどうか等を聴取します。
まず視診上で姿勢や行動を確認して明らかな疼痛を呈していないかどうかや、呼吸状態の確認を行います。視診で状態を把握後、腹部の触診を実施し、胃の硬さや緊張、触診時の疼痛の有無を確認します。
触診後、X線検査により消化管の評価を行います。消化管うっ滞では主に胃に消化管内容物が停滞し、以降の消化管においてはガスの貯留が認められることがあります(写真1, 2)。重症例では胃の内容物が圧縮された特徴的な像が認められます。
消化管うっ滞は疼痛や不快感などによっても引き起こされるため、様々な疾患が原因となります。特に不正咬合は消化管うっ滞と同様に最も一般的な疾患の一つであり、併発していることも少なくありません。そのため、上記の消化管うっ滞の検査の他に口腔内検査などの他の疾患の精査も必要となり、上記の様々な検査をもとに確定診断を行います。
5.消化管うっ滞の治療方法
問診時の食餌内容に問題があれば、まずはその内容の見直しを行います。具体的には牧草とペレットを中心とした食餌が理想であり、他の野菜やおやつは控えます。さらに牧草もチモシーやアルファルファ、イタリアンライグラスなどがありますが、主食としての牧草は高繊維、低タンパクのものが必要であるため、その特徴を最も満たすチモシーの一番刈りを与えます。他の牧草もその嗜好性や栄養面から、成長期や食欲不振時などで使い分けることが重要です。
治療の方針としてはうっ滞の緩和と、疼痛があればその管理を行います。脱水の評価を行い、水和による循環の改善を目的とした輸液を行うほか、消化管運動促進薬を投与します。さらに食欲の廃絶が生じている場合には、消化管の蠕動運動促進と栄養の補給を目的とした強制給餌を行うこともあります。強制給餌は必要カロリーを摂取させることで、栄養不良により生じる肝不全;肝リピドーシスの予防にもつながります。
ただし、胃に停滞した内容物が圧縮されて固くなり、閉塞に至った場合や内科療法で反応がない場合には外科的に内容物を取り除くこともあります。
また消化管うっ滞を副次的に起こしうるような疾患が明らかになったときには、その疾患にアプローチしていきます。
6.消化管うっ滞の予防
予防としては食餌の管理が最も重要であり、牧草を食べずにペレットが主食となっている場合や野菜、おやつを常食している個体は消化管の蠕動運動が低下しやすく消化管うっ滞のリスクが高まります。さらにこれらの食餌内容は、消化管うっ滞の原因となりうる不正咬合の原因にもなります。
野菜や市販のおやつ類を喜んで食べる姿は見ていて嬉しいものですが、長期的なウサギの健康のためにもチモシーを主食として与えていくことが重要です。また、チモシーは多年草であり、収穫のシーズンによって一番刈り、二番刈り、三番刈りに分けられ、その年の初めに収穫されたチモシーである一番刈りは、粗蛋白や粗脂肪が少なく高繊維であるためウサギの主食として最も適しています。ただし硬く栄養は少ない特徴から嗜好性は劣るため、食欲低下している場合やもとよりチモシーをあまり食べない場合は、一番刈りよりも繊維質は少ないが高栄養で嗜好性の高い三番刈りから与えていきます。
他にもマメ科のアルファルファも嗜好性が高いですが、繊維質が少なくタンパク質やカルシウムの多い特徴を有しているため、成長期以降も与え続けると消化管うっ滞の他にも不正咬合や肥満、尿路結石の原因となります。そのため主食として与えるのは成長期(生後6か月程度)までに留めて、年齢に伴ってチモシーの割合を増やしていくことが重要です。
7.まとめ
様々な原因から起こるウサギの消化管うっ滞は、重症化すると死に至る疾患です。ただしもっとも一般的な原因は不適切な食餌内容であることから、食餌内容を適正化することで十分予防することができる疾患です。早期の発見による軽症例では内科的な反応が奏功することも多いですが、軽症時には明らかな症状を表すことが少ない動物です。「いつも食べている量を食べない」や「少し元気がない気がする」、「ウンチの形がいつもと違う」等の変化があれば早めに動物病院を受診しましょう。また消化管のうっ滞の原因となりうる不正咬合の評価等の定期的な健康診断を受けることも重要です。
ウサギの不正咬合
「ウサギの不正咬合:原因、症状、治療」
1.はじめに
ウサギの歯科疾患はもっとも一般的な疾患の一つです。なかでも不正咬合はウサギの歯が何らかの原因で正常な位置にならず、噛み合わせが悪くなる状態を指します。一度不正咬合を引き起こすと生涯にわたる処置が必要となり、その悪化は様々な疾患の原因となります。
この記事では、ウサギの不正咬合について、その原因、症状、治療法、そしてその予防方法について詳しく説明します。
2.不正咬合の原因
不正咬合はさまざまな原因によって引き起こされることがあり、先天的なものと後天的なものに大きく分けられます。その中でも、最も一般的な原因は以下の通りです。
遺伝的要因
ウサギの不正咬合は、遺伝的な骨の異常などの要因によって引き起こされることがあります。さらに体が小さいほど咬む力が弱く、不正咬合を引き起こしやすいとも言われています。
栄養不良
適切な栄養を摂取しない場合、ウサギの歯の成長や発達に問題が生じる可能性があります。特にカルシウムやビタミンの不足により、歯の安定性が低下することでも生じる可能性があります。
歯の磨耗
歯の磨耗が不十分な場合、歯の成長や発達に問題が生じることがあります。ヒトやイヌなどと異なり、ウサギは特に歯が常に成長し続ける常生歯であるため、適切な歯冠の摩耗が必要です。野菜やペレットを多く与えている場合は注意が必要です。
外傷
ウサギが外傷を受けた場合、歯の成長や発達に影響を与える可能性があります。固い金属などを日常的に齧ることや何らかの外傷によって歯が折れることで、正常の位置から歯がずれて過長します。外傷を原因とした不正咬合は特に切歯で多く認められます。
3.不正咬合の症状
ウサギの不正咬合にはさまざまな症状が現れる場合がありますが、特徴的なものは少なく、症状や検査により鑑別する必要があります。以下は、主な症状の一部です。
食欲不振
不正咬合が進行すると咀嚼や嚥下が困難となる上、痛みを伴うことで食欲が低下し、それに伴い体重の減少が認められることがあります。
流涎や鼻汁
不正咬合の発生箇所としては歯冠(歯の咬合面)と歯根(歯槽骨との接着面)に分けられ、その箇所によっても症状が異なります。歯冠で発生した場合は、過長した臼歯により口が閉まりにくくなること(閉口障害)で流涎が増え、さらには閉口障害による二次的な下顎の脱臼や、切歯の咬耗が減少することによる切歯過長の原因となります。
歯根が過長した場合は下顎骨の隆起や、上顎の過長では鼻腔や眼窩に達すると鼻汁や眼脂、流涙を引き起こします。流涎を起こした個体はグルーミングにより前肢の汚れや脱毛が認められることがある。
口の周りの腫れ
過長した臼歯が形成する棘状縁(歯の縁の尖った部分)が舌や頬粘膜を傷つけることで口内炎を引き起こすほか、動揺した歯を原因とした歯周病が起こることがあります。さらに歯肉の異常増殖により、下顎の歯冠が歯肉に覆われる状態となることがあります(歯肉増殖症、歯肉過形成)。また不正咬合による動揺歯やそれに起因した歯周病などが原因で歯根や周囲の歯槽骨に膿瘍が発生することで、顔の腫れや排膿が認められます。
消化器系の問題
不正咬合が進行すると、痛みや不快感、食餌中の繊維質の不足によって消化管の胃腸蠕動が低下することで消化管の鬱滞を引き起こすことがあり、さらに食欲不振を引き起こすこともあります。これにより糞の減少や大小不同、形態異常が認められます。
4.不正咬合の検査
問診や症状のほかに、口腔内検査やX線検査を実施します(写真1)。
臼歯や外から観察のできない歯根についてはX線検査による評価も行います。なお無麻酔下での検査には限界があり、臼歯の観察や多角的なX線検査には麻酔処置が必要となります。さらにウサギは骨が薄く、無麻酔下での処置は骨折等のリスクを伴うため、麻酔下での検査のメリットは大きいです。
5.不正咬合の治療法
ウサギの不正咬合に対する処置は症状の重症度や原因によって異なりますが、歯冠の過長の場合は主に外科的な介入となります。ただし歯冠の過長と歯根の過長を併発していることも少なくありません。なお、ウサギが処置中に暴れたりすることによる骨折などのリスクを低減させるために、基本的に口腔内の精査や歯冠の過長の処置は麻酔下で実施します。
歯冠の過長
歯冠の過長により不正咬合が生じている場合は、その原因となっている歯を特定し、できる限り元の形に整形する必要があります。臼歯や歯の状態によっては、個体の安全のためにも鎮静処置を行って不動化し、処置を行うこともあります。
一度不正咬合を引き起こした歯は元の状態に戻ることはなく、歯の成長速度に合わせた定期的な処置が必要となります。膿瘍を伴う場合などで動揺歯となっている場合は抜歯を行う場合もありますが、骨折のリスクや術後のケアの観点からも抜歯処置を行うことは少ないです。
歯肉の過形成を生じている場合では、歯肉の焼烙を行って歯の研磨を実施します。
歯根の過長
歯根の過長を起こしている場合は外科的な介入は難しく、対症的な処置が中心となります。食餌や飼育環境に問題がある場合はその見直しをするとともに、一般状態によっては強制給餌や点滴、鎮痛剤の使用を検討します。特に重度の不正咬合を起こしている場合は自ら食餌をとることができないことも多いため、胃腸の蠕動運動促進のために強制給餌は重要な処置となります。
歯根の過長により根尖周囲膿瘍(写真2)を引き起こしている場合には排膿処置を行ったうえで、適切な抗生剤や鎮痛剤を投与します。
6.予防
予防には食餌の管理が大きい役割を持ちます。特に牧草を食べずにペレットや野菜がメインとなっている個体では臼歯の咬耗が減少するほか、左右方向の臼歯の咀嚼が減少することで臼歯の形態の変化を引き起こします。食いつきの良いペレットやおやつを多く与えたくなりますが、ウサギの歯の健康のためにもチモシーを主食として与えていくことが重要です。
チモシーは多年草であり、収穫のシーズンによって一番刈り、二番刈り、三番刈りに分けられます。一番刈りはその年の初めに収穫されたチモシーであり、粗蛋白や粗脂肪が少なく、高繊維であるためウサギの食餌として最も適しています。ただし硬く栄養は少ないため嗜好性は劣ります。一方で三番刈りは栄養価が高く嗜好性が高い特徴を有しますが、繊維質が少ないため胃腸の蠕動運動が低下する可能性があります。ただし食欲低下している場合やもとよりチモシーをあまり食べない場合は、嗜好性の高い三番刈りから与えていきます。
マメ科のアルファルファも嗜好性が高いですが、繊維質が少なくタンパク質やカルシウムの多い特徴を有しているため、大人になってからも与え続けると不正咬合の他にも肥満や尿路結石、鼓張症の原因となります。そのため主食として与えるのは成長期(生後6か月程度)までに留め、以降は徐々にチモシーの割合を増やしていきましょう。
7.まとめ
不正咬合はウサギの生活に大きな影響を及ぼし、一度なってしまうと生涯に渡っての処置が必要となってしまいます。さらに不正咬合から続発する歯周病の他、食餌を摂れないことによって様々な病気の原因となります。
ただしウサギの不正咬合は普段からの食餌や環境の整備により、十分防ぐことのできる病気です。お家での飼育環境を見直しながら、動物病院での定期的な健康診断を実施することが重要です。
当院でも不正咬合に関して、できる限りの検査、処置を行っております。食欲不振の症状はもちろんのこと、定期的な検査に関しても気軽にご相談ください。
1.はじめに
ウサギの歯科疾患はもっとも一般的な疾患の一つです。なかでも不正咬合はウサギの歯が何らかの原因で正常な位置にならず、噛み合わせが悪くなる状態を指します。一度不正咬合を引き起こすと生涯にわたる処置が必要となり、その悪化は様々な疾患の原因となります。
この記事では、ウサギの不正咬合について、その原因、症状、治療法、そしてその予防方法について詳しく説明します。
2.不正咬合の原因
不正咬合はさまざまな原因によって引き起こされることがあり、先天的なものと後天的なものに大きく分けられます。その中でも、最も一般的な原因は以下の通りです。
遺伝的要因
ウサギの不正咬合は、遺伝的な骨の異常などの要因によって引き起こされることがあります。さらに体が小さいほど咬む力が弱く、不正咬合を引き起こしやすいとも言われています。
栄養不良
適切な栄養を摂取しない場合、ウサギの歯の成長や発達に問題が生じる可能性があります。特にカルシウムやビタミンの不足により、歯の安定性が低下することでも生じる可能性があります。
歯の磨耗
歯の磨耗が不十分な場合、歯の成長や発達に問題が生じることがあります。ヒトやイヌなどと異なり、ウサギは特に歯が常に成長し続ける常生歯であるため、適切な歯冠の摩耗が必要です。野菜やペレットを多く与えている場合は注意が必要です。
外傷
ウサギが外傷を受けた場合、歯の成長や発達に影響を与える可能性があります。固い金属などを日常的に齧ることや何らかの外傷によって歯が折れることで、正常の位置から歯がずれて過長します。外傷を原因とした不正咬合は特に切歯で多く認められます。
3.不正咬合の症状
ウサギの不正咬合にはさまざまな症状が現れる場合がありますが、特徴的なものは少なく、症状や検査により鑑別する必要があります。以下は、主な症状の一部です。
食欲不振
不正咬合が進行すると咀嚼や嚥下が困難となる上、痛みを伴うことで食欲が低下し、それに伴い体重の減少が認められることがあります。
流涎や鼻汁
不正咬合の発生箇所としては歯冠(歯の咬合面)と歯根(歯槽骨との接着面)に分けられ、その箇所によっても症状が異なります。歯冠で発生した場合は、過長した臼歯により口が閉まりにくくなること(閉口障害)で流涎が増え、さらには閉口障害による二次的な下顎の脱臼や、切歯の咬耗が減少することによる切歯過長の原因となります。
歯根が過長した場合は下顎骨の隆起や、上顎の過長では鼻腔や眼窩に達すると鼻汁や眼脂、流涙を引き起こします。流涎を起こした個体はグルーミングにより前肢の汚れや脱毛が認められることがある。
口の周りの腫れ
過長した臼歯が形成する棘状縁(歯の縁の尖った部分)が舌や頬粘膜を傷つけることで口内炎を引き起こすほか、動揺した歯を原因とした歯周病が起こることがあります。さらに歯肉の異常増殖により、下顎の歯冠が歯肉に覆われる状態となることがあります(歯肉増殖症、歯肉過形成)。また不正咬合による動揺歯やそれに起因した歯周病などが原因で歯根や周囲の歯槽骨に膿瘍が発生することで、顔の腫れや排膿が認められます。
消化器系の問題
不正咬合が進行すると、痛みや不快感、食餌中の繊維質の不足によって消化管の胃腸蠕動が低下することで消化管の鬱滞を引き起こすことがあり、さらに食欲不振を引き起こすこともあります。これにより糞の減少や大小不同、形態異常が認められます。
4.不正咬合の検査
問診や症状のほかに、口腔内検査やX線検査を実施します(写真1)。
臼歯や外から観察のできない歯根についてはX線検査による評価も行います。なお無麻酔下での検査には限界があり、臼歯の観察や多角的なX線検査には麻酔処置が必要となります。さらにウサギは骨が薄く、無麻酔下での処置は骨折等のリスクを伴うため、麻酔下での検査のメリットは大きいです。
5.不正咬合の治療法
ウサギの不正咬合に対する処置は症状の重症度や原因によって異なりますが、歯冠の過長の場合は主に外科的な介入となります。ただし歯冠の過長と歯根の過長を併発していることも少なくありません。なお、ウサギが処置中に暴れたりすることによる骨折などのリスクを低減させるために、基本的に口腔内の精査や歯冠の過長の処置は麻酔下で実施します。
歯冠の過長
歯冠の過長により不正咬合が生じている場合は、その原因となっている歯を特定し、できる限り元の形に整形する必要があります。臼歯や歯の状態によっては、個体の安全のためにも鎮静処置を行って不動化し、処置を行うこともあります。
一度不正咬合を引き起こした歯は元の状態に戻ることはなく、歯の成長速度に合わせた定期的な処置が必要となります。膿瘍を伴う場合などで動揺歯となっている場合は抜歯を行う場合もありますが、骨折のリスクや術後のケアの観点からも抜歯処置を行うことは少ないです。
歯肉の過形成を生じている場合では、歯肉の焼烙を行って歯の研磨を実施します。
歯根の過長
歯根の過長を起こしている場合は外科的な介入は難しく、対症的な処置が中心となります。食餌や飼育環境に問題がある場合はその見直しをするとともに、一般状態によっては強制給餌や点滴、鎮痛剤の使用を検討します。特に重度の不正咬合を起こしている場合は自ら食餌をとることができないことも多いため、胃腸の蠕動運動促進のために強制給餌は重要な処置となります。
歯根の過長により根尖周囲膿瘍(写真2)を引き起こしている場合には排膿処置を行ったうえで、適切な抗生剤や鎮痛剤を投与します。
6.予防
予防には食餌の管理が大きい役割を持ちます。特に牧草を食べずにペレットや野菜がメインとなっている個体では臼歯の咬耗が減少するほか、左右方向の臼歯の咀嚼が減少することで臼歯の形態の変化を引き起こします。食いつきの良いペレットやおやつを多く与えたくなりますが、ウサギの歯の健康のためにもチモシーを主食として与えていくことが重要です。
チモシーは多年草であり、収穫のシーズンによって一番刈り、二番刈り、三番刈りに分けられます。一番刈りはその年の初めに収穫されたチモシーであり、粗蛋白や粗脂肪が少なく、高繊維であるためウサギの食餌として最も適しています。ただし硬く栄養は少ないため嗜好性は劣ります。一方で三番刈りは栄養価が高く嗜好性が高い特徴を有しますが、繊維質が少ないため胃腸の蠕動運動が低下する可能性があります。ただし食欲低下している場合やもとよりチモシーをあまり食べない場合は、嗜好性の高い三番刈りから与えていきます。
マメ科のアルファルファも嗜好性が高いですが、繊維質が少なくタンパク質やカルシウムの多い特徴を有しているため、大人になってからも与え続けると不正咬合の他にも肥満や尿路結石、鼓張症の原因となります。そのため主食として与えるのは成長期(生後6か月程度)までに留め、以降は徐々にチモシーの割合を増やしていきましょう。
7.まとめ
不正咬合はウサギの生活に大きな影響を及ぼし、一度なってしまうと生涯に渡っての処置が必要となってしまいます。さらに不正咬合から続発する歯周病の他、食餌を摂れないことによって様々な病気の原因となります。
ただしウサギの不正咬合は普段からの食餌や環境の整備により、十分防ぐことのできる病気です。お家での飼育環境を見直しながら、動物病院での定期的な健康診断を実施することが重要です。
当院でも不正咬合に関して、できる限りの検査、処置を行っております。食欲不振の症状はもちろんのこと、定期的な検査に関しても気軽にご相談ください。
ねこちゃんが食べてはいけないもの
ねこちゃんの食事のイメージってなんですか?
ねこちゃんのご飯はカツオ味やマグロ味など魚介類の味が多いと思います。
それもあってか、ねこちゃんのご飯=魚というのが一般的なイメージかと思います。
そこで今回は魚介類の中でも食べてはいけないものや、あげる時に注意が必要なものをご紹介いたします
青魚(いわし・さば・あじ等)
青魚に寄生しやすい「アニサキス」という寄生虫がいます。
アニサキスは人のみならず、ねこちゃんにも害がある恐れが・・・
あげるなら、60度以上のお湯などで1分以上加熱してからあげてください。
ただしあげすぎにも注意が必要です
青魚に多く含まれる「不飽和脂肪酸」を摂り過ぎると皮下脂肪や内臓脂肪に炎症が起きて発熱が現れる「黄色脂肪酸」の原因になりますのであげる量・頻度は控えめにしてあげてください。
🐠青魚(イワシ・サバ・アジ等)🐠
青魚に寄生しやすい「アニサキス」という寄生虫がいます
アニサキスは人のみならず、猫ちゃんにも害がある恐れが、、、
あげるなら60℃以上のお湯で1分以上加熱してからあげてください
但し、あげすぎにも注意が必要です
青魚に多く含まれる「不飽和脂肪酸」を摂りすぎると皮下脂肪や内臓脂肪に炎症が起きて
発熱が現れる「黄色脂肪症」の原因になりますので、あげる量・頻度は控えめにしてください
イカやタコの軟体類・エビやカニの甲殻類
生のエビやイカなどには「チアミナーゼ」というビタミンB1分解酵素が含まれており
ビタミンB1欠乏症になる恐れがあります
けいれん等の神経症状を起こし死に至る危険もあるので絶対に与えないようにしてください
完全に加熱処理すればチアミナーゼは失活しますが、元々消化しにくい食材ですので
加熱処理をしても嘔吐や下痢を起こすことも、、、
市販の缶詰類など魚そのまま使ってるのもあるけどどうなの?マグロ味とかあげて大丈夫?
魚そのまま使ってる缶詰類などはしっかり加熱処理を施しています
ただ、あげすぎには注意しましょう!
〇〇味に関しては魚そのままではなくエキス(有効成分を抽出したもの)を
使用していますので、こちらも安心してあげて大丈夫で
渋谷区、世田谷区、杉並区、中野区、新宿区、笹塚、幡ヶ谷、初台、南台、和泉、代田橋、明大前、高井戸、下北沢、桜上水の方は往診もいたします。
『詳細ページ情報(サイトタイトル、ディスクリプション)』 渋谷区 新宿区 世田谷区 杉並区 中野区 笹塚 動物病院
犬猫が吐いた
「吐く」は2種類ある
「吐く」とは2種類あります
胃や腸の中にあるものを口から出すことを「嘔吐」といいます
食べたものや飲み込んだもの外に入る前に口から出ることを「吐出」といいます
吐出
正常でも食事を一気に食べた際など、何かのきっかけで吐出することもあります
一方で食道などに病気がある場合でも生じることがあります
頻度が多かったり、飲み込みがうまくできない、体重が増えないなどの
他の症状を伴う場合は異常です
嘔吐
嘔吐とは胃の内容物を逆流させて吐き出すことをいい、えずきを伴います
頻度が多かったり、繰り返し生じたりする場合は異常です
内臓疾患や誤食による中毒などでも生じます
まとめ
毎日吐いてしまう、吐こうとするのに吐き出せない、何度も繰り返し吐く場合などは
動物病院に来院しましょう
動物病院に吐いたものを持っていくか、難しい場合は写真や動画に残しておくと診察の際に役立ちます
ブラッシングについて
なんで必要なの?
抜け毛・毛玉予防
ブラッシングをすることで毛並みを綺麗に整えることが出来ます
また、ブラッシングをしないことで毛玉が出来ると汚れや、皮膚が引っ張られることで
わんちゃんが痛い思いをしてしまいます
皮膚病・ノミダニ予防
ブラッシングの際に毛や地肌を見ることが出来るので、ノミダニを見つけることが出来たり
皮膚の状態に気づくことが出来たりします
愛犬とのコミュニケーション
日頃からお手入れをすることで人に触れられることに慣れていきます
ブラッシングのマッサージ効果でリラックスするわんちゃんもいます
ブラシの選び方
ラバーブラシ
皮膚への刺激を与えずにブラッシングでき、ブラシ部分が皮膚に触れやすい
短毛腫や、ブラッシングが苦手な子にもおすすめです
毛玉や絡まりをほぐす用途には向かないため、長毛腫の場合にはスリッカーブラシなどの併用がおすすめです
スクラッチャーブラシ
毛穴から抜けていながらも落ち切れていないアンダーコートを除去するためのブラシ
特に換毛期になると大量の抜け毛が出るダブルコートの犬種におすすめです
スリッカーブラシ
長毛腫や、ダブルコートの犬種に向いているブラシで、毛の絡まりや毛玉がほぐしやすく
細かい毛でもしっかりとすきとることができ、ふわふわな仕上がりとなります
ピンブラシ
毛のもつれをとかしたり、仕上げ用として使われるブラシで、トイプードルなどのくせ毛
巻き毛・長毛腫などにおすすめです
ブラッシングの方法は?
まずブラシを使い、毛先から全身の毛をとかし被毛についた汚れや抜け毛をとります
次にコームを使用し被毛を綺麗に整えていきます
ブラッシングをする際は無理にブラッシングをしようとしたり、力を強くかけすぎたりしてしまわないように
気を付けましょう
毛玉や毛の絡まりがひどい場合は無理にブラシやコームはかけず動物病院やサロンで
ブラッシングをしてもらいましょう
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