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フェレットの副腎疾患

はじめに
 フェレットの副腎疾患は副腎腫瘍や副腎の過形成を原因として発生する疾患です。また副腎疾患は膵臓腫瘍に起因するインスリノーマや心疾患と並び、フェレットに最も多くみられる疾患の一つです。国内で飼育されるフェレットの多くは早期に避妊去勢手術を実施されていることが多く、それに伴い生殖器疾患の報告が減少したという報告もありますが、発生の原因としてわかっていない事も多い病気です。
 ここではフェレットの副腎疾患についての症状や検査、治療法について詳しく解説していきます。
 
症状
 フェレットの副腎疾患は中高齢のフェレットに好発します。副腎疾患に特徴的な徴候としては以下のようなものが挙げられます。
・脱毛
・メス:外陰部腫大/オス:前立腺肥大による排尿障害
・掻痒
 その他、皮膚症状や筋肉の萎縮などの徴候も認められ、特に脱毛については他の疾患を原因として発生することは少ないため副腎疾患を強く疑います。ただしその観察部位は個体によって差があり、注意深く観察し、鑑別する必要があります。脱毛やそれに続発する皮膚症状などと比較して、オスの前立腺肥大による排尿障害や、骨髄抑制がフェレットの寿命に大きく関わります。
 
検査
 脱毛などの特徴的な臨床症状やその好発年齢から副腎疾患を強く疑うことが出来るが、その診断は副腎の検出やホルモン測定が挙げられます。ただしホルモン測定は費用やその意義から実施せずに診断的治療に進むことも少なくありません。
 
超音波検査
 通常、フェレットの副腎は楕円形で平たい形状であり、罹患副腎では腫大や変形を認めることが多い。超音波検査ではこの腫大や変形がないかを確認する。
 
ホルモン測定
 フェレットの副腎疾患では前述のように性ホルモンの上昇が認められることが多く、ホルモン値測定による診断方法も報告されています。ただし、明らかな臨床症状があってもホルモンの値が上昇しない事もあり、臨床症状や他の検査結果を踏まえたうえで鑑別することが重要です。
 
治療
 治療方針としては完治ではなく、臨床症状を抑える目的での寛解を目指します。性ホルモンを過剰に分泌する副腎が根本的な原因となっているため、外科的な治療では罹患副腎の切除を行います。外科的な処置のリスクが高い個体では内科的に治療していくことが推奨されます。なお、内科的治療に合わせて外科的治療を実施した方が予後が良い可能性も指摘されているため、その治療方針については症例の状態を見て決定します。
 
外科的治療
 副腎の腫大を認めた場合に治療を開始するが、明らかな腫大を認めない場合には内科的な診断的治療を実施するか、経過観察として定期的に副腎を評価します。なお、外科的治療として罹患副腎を摘出した後に、反対側の副腎や副副腎の腫大が認められることもあり、その場合は再手術や内科的治療を開始します。
 
内科的治療
 主に脱毛などの臨床症状の発現を治療開始のポイントとし、定期的な検査のもとで治療を行います。治療に用いるのはGnRHアナログという性ホルモンの前駆物質であり、これを投与することによる負のフィードバックが生じて過剰な性ホルモンの産生を抑える目的になります。

まとめ
 フェレットの副腎疾患は性ホルモンの過剰分泌によるものです。治療方針としては、外科的治療により根本的な原因となっている副腎を摘出するか、内科的治療によってそのホルモン分泌を抑えていくかの二つになります。なお、いずれも臨床症状を抑えて管理することが目的となり、完治することは難しい疾患です。
 ただし早期発見および早期の治療介入により、予後が良好となることも示唆されており、常日頃から体調に変化がないか観察していくことが重要です。
 


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