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爬虫類の代謝性骨疾患(MBD)
主に爬虫類や両生類にみられる病気で、偏食のフクロモモンガでみられることもあります。
くる病や骨軟化症という骨疾患を引き起こすこともあります。
低カルシウム血症が原因とされ、栄養不均衡(低カルシウム、高リン、ビタミンD不足)や、紫外線が必要な種では照射不足により起こります。
成長不良や食欲不振、骨の菲薄化などが主な症状です。重度になるとけいれんを起こしたり、骨格が変形したりします。カメの場合は甲羅の変形やクチバシの過長がみられます。
まずは飼育環境の見直しが必要で、症状に応じてカルシウムの注射や内服薬が必要な場合があります。
爬虫類のクリプトスポリジウム症
原虫というごく小さな寄生虫の一種であるクリプトスポリジウムは、様々な爬虫類に対して致命的な消化器疾患を引き起こします。
国内では特にヒョウモントカゲモドキの発症が多いとされています。
また、海外のペットショップにおける爬虫類の死因においては、トカゲで44.4%、ヘビで6.7%、カメで4%を占めるといわれています。
嘔吐、下痢、食欲不振などが一般的な症状として見られます。
発症初期には食欲があるにもかかわらず体重が減少していくというのが特徴で、末期には重度の削痩を示したり、突然死してしまうことがあります。
効果的な治療法は現在確立されておらず、抗生物質、補液や強制給餌などの支持療法を中心に行います。
基本的には予後不良ですが、根気強く治療を継続すると治癒したという例も報告されています。
クリプトスポリジウムは単純な糞便検査で検出されることもありますが、検出率が低いため、当院では疑わしい子に対して遺伝子検査(RT-PCR法)を実施しています。
エジプトトゲオアガマの膀胱結石
爬虫類であるエジプトト ゲオアガマは、総排泄孔から固形物の糞、液状の尿、クリーム状の尿酸塩を排泄する性質があり、この尿酸が硬化することによって結石になります。タンパク質 の過剰摂取、水分不足、環境湿度の低下などが主な原因となります。結石が大きくなると痛みを伴い、周辺の臓器を圧迫するので、食欲低下、便秘、卵秘、尿道 閉塞、などさまざまな異常を引き起こします。
体腔内臓器(腹膜、心臓、膀胱など)の浮腫等の異常や、腎臓への負担の増加や脱水による高尿酸塩血症(=痛風 の症状)がみられることもあります。非常に大きくなった結石が膀胱の穿孔や周辺臓器の損傷を起こすと生命の危険にさらされる場合があります。全身麻酔によ る膀胱切開で結石を摘出する方法が、一般的な治療法となります。
グリーンイグアナの腸閉塞
腸管の内容物の通過が何らかの原因で障害された状態をいいます。原因の多くは異物の誤食で、腸の腫瘍や内部寄生虫が閉塞の原因となることがあります。
脱水やショック状態に陥っている場合には、まずはその治療を行います。外科手術で異物を取り除くといった原因に応じた治療を行います。
感染症や寄生虫症を予防しておくことも重要です。また、異物を飲み込む危険がないような環境にしましょう。
インドシナウォータードラゴンのヘミペニス脱
ヘミペニスに外傷・炎症を起こした場合、また、ヘミペニスの収縮筋や総排泄腔の括約筋の障害を伴う神経系の異常、排泄物の停滞などが原因となり、露出したヘミペニスが元に戻らない状態のことです。
脱出したヘミペニスはうっ血により浮腫や壊死を起こすので、組織の損傷が少なければ元の場所に整復し縫合しますが、著しい損傷や壊死が認められる場合は切断術を行います。
マツカサトカゲのダニ
マツカサトカゲはオーストラリアを代表する爬虫類です。WC(野生採集)個体では、よく鱗と鱗の間にダニがみられます。
診断は、皮膚の掻爬検査で成体や卵を検出します。
治療は、ダニ駆除薬(イベルメクチン)の注射を週1回、計4~5回行います。
ボールパイソンの水疱病
概要
ヘビ類に多く見られる皮膚病で、水疱症、小疱性皮膚炎、壊死性皮膚炎、スケールロットなど、様々な名称があります。
原因
細菌感染が皮膚に成立すると発症します。
ダニや寄生虫感染、免疫低下などの内的要因と、ケージ内の多湿や換気不足、不衛生、ストレスなどの環境要因が関係することがあります。
症状
主に腹部の皮膚が赤くなったり、水ぶくれを形成し、それがはじけて潰瘍になったりします。
重度になると敗血症を引き起こし、命にかかわることもあります。
治療法
抗生物質の投与と患部の消毒がメインの治療法になります。
症状に応じて外用薬(塗り薬)を処方することもあります。
また、飼育環境の見直しも非常に重要です。
コーンスネークの尿酸結石による便秘
爬虫類が持つ総排泄孔という器官は排便、排尿、生殖(産卵など)の3つの機能を持ちます。
細長い身体を持つヘビは、尿と同時に作られる尿酸結石を詰まらせて便秘を引き起こしやすい動物です。
水分不足、運動不足、温度不足(パネルヒーターの上でじっとしている)などが尿酸結石による総排泄孔を詰まらせる原因として挙げられます。
便秘を引き起こしてしまうと食欲の低下などにつながります。
詰まった尿酸結石の取り出し方は、総排泄孔付近を押して出す方法、器具を総排泄孔に挿入して取り出す方法、手術による摘出などがあります。
日頃から記録をつけるなどして、正常に排便できているか観察してあげることが重要です。
カメの卵胞うっ滞
卵胞という卵のもととなるものがカメなどの爬虫類の卵巣では常に作られ、通常はそのまま退縮したり卵となって排出されます。
そのサイクルが何らかの原因で崩れてしまうと、卵胞が卵巣や卵管に大量にうっ滞した状態になります。
卵胞がうっ滞すると、他の内臓が圧迫されてしまい元気や食欲の低下、直腸脱や卵管脱などの症状を引き起こしてしまいます。
卵胞は殻が作られる前の卵であるため、特に甲羅をもつカメの場合、レントゲンで確認できないことも多く、診断には腹部のエコー検査が用いられます。
甲羅を開いて卵胞を含めた卵巣・卵管摘出する外科手術が治療法としては推奨されています。
また、手術が難しいような症例の場合はホルモン製剤を用いた内科療法も試されています。(爬虫類の卵胞鬱滞におけるリュープリン治療の可能性)